the essence

2023/05/03

vol.6【プリントアイテム】パーソナルな部分をのぞける服と本と食
|エディター小林文「BEIGE,の奥深きシンプル」

vol.5のチーフデザイナー船津さんへのインタビュー、もうお読みいただけただろうか。BEIGE,の魅力、船津さんのお人柄をぎゅぎゅっと濃縮して収めたつもりなのだけれど、泣く泣くカットした部分をやはり載せておきたくて…。今回はそれについて書いてみようと思います。

あのインタビューのあと、ある話題でひと盛り上がりしました。それは“食”について。

というのも、私が船津さんへインタビューをしている真っ最中、撮影機材を片付けランチ休憩をとっていたカメラマンとプレス陣がなにやらおいしそうな話をしていて。さすがに詳細までは聞きとれませんでしたが、家で料理するときの食材のこだわりや手本にしている本、ナチュールワインの買い出し場所など…。私は船津さんと会話しながらも気になってしまい、数メートルむこうの話にも耳を傾けていたのでした(集中しなさいよ笑)。

インタビュー終了後、私と船津さんもその“おいしそうな”会話に合流。そこで船津さんのお気に入りの本について教えていただきました。

本のタイトルは『土を編む日々』。元々出版社で編集の仕事をしてきた寿木けいさんが書いたレシピ・エッセイ。船津さん曰く「野菜が最高においしくいただける本」とのこと。特にオススメのレシピは?と問うと「小松菜とマッシュルームのサラダ!」と返ってきました。

生の小松菜とマッシュルームにパルミジャーノレッジャーノとごま油、レモンをギュッと絞っておしまい。「苦味と歯ざわり、そして土の香りがとってもワインに合んです」と。私はその帰り道に書店へ直行し、本を購入していました。

すぐに作ってみたサラダはもちろんおいしかったし、それ以上に船津さんの本棚を少しのぞけたことがうれしかった。船津さんが鹿児島育ちの自然好きだということ、著者の寿木さんも富山うまれで親戚はみな農家であることなどを知って、「なるほど」と。読んでいる本はその人のパーソナルな部分と近くて、だからこそ、垣間見れると心を許してもらえた気がしてうれしいものです。

船津さんははじめてお会いしたとき、黒のTシャツに黒白の太ストライプパンツでした。トレードマークのロングヘアと黒縁メガネと相まって、第一印象はモードな“THEデザイナーさん”。その船津さんがあの本を教えてくれたことで、新たな一面を知れたことで、ますます船津さんが好きになりました。

新たな一面を知ったという意味で、今回のBEIGE,のフラワープリントも同じ。ベーシックなカラー、しかも無地がベースのBEIGE,ですが、今回は淡いきれい色、そして、フラワープリント!


2023ssのシーズンテーマ「CITY GARDEN」をイメージして作ったこの柄は手描きのオリジナル。線が細く伸びやかなタッチ、遠くから見ると花柄だとはわからないくらいの曖昧なボタニカル柄。無地の延長のように着られる、珍しい大人の花柄です。

スカートもワンピースもいいけれど、私が着るならまずはトップス。前身頃はドライなニット、後ろ身頃は柄のシフォン、背中の真ん中あたりのねじれたデザイン。甘いはずの花柄が着てみると実はモードというギャップがたまりません。

これを作ったのがモードかつ自然を愛する船津さんだということ。服と本と食。いろんなところに少しずつ“らしさ”が隠れていて、全部がつながっている。うーん、もう大概知っていたはずのBEIGE,、、まだまだ沼は深そうです…!笑



ドッキングニット/¥29,700(税込)
ギャザースカート/¥39,600(税込)
ワンピース/¥48,400(税込)
ワイドクロップドパンツ/¥39,600(税込)




【profile】
1985年愛知県名古屋市生まれ。大学卒業後上京し、約5年半、人材系企業に営業職として勤務。28歳でエディターを志し、転身。現在はフリーランスのファッションエディターとして主婦の友社『GISELe』、講談社『mi-mollet』などで編集・執筆中。Instagram@kobayashi_bunでは日々リアルなコーディネートを更新中。noteではエッセイも。