2022SSEssence

2022/03/25

vol.3【リネンリバー】デザインの根っこにあるのは、“気迫”

ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、私は大の“お笑い”好きです。特に今は、フリーランスという自分の裁量次第で比較的自由がきく働き方のため、時間を見つけてはお笑いライブに駆けつけています。

どんなライブに行っているか…は長くなるのでここでは語りませんが(気になる方は https://note.com/kobayashi_bun/ でぜひ♡)、「好きだな〜」と思う芸人さんに共通して言えることは、“気迫”です。

漫才でもコントでもピン芸でも、王道でもシュールでも、東でも西でも…ジャンルやタイプは関係なし。「こういうのがウケるよね?」ではなく、「俺は/私は、これがおもしろいと思っている!」という“気迫”がネタを通して伝わってくると、胸がアツくなるのです。

そして、それはお笑いに対してだけではないな〜と、最近気がついて。そう、私がBEIGE,の服を好きな理由もやはり、“気迫”だから。

今回のリネンシリーズの話を、チーフデザイナー・宮下厚子さんにうかがったときのこと。開口一番におっしゃったのは、

「BEIGE,は、リバー仕立ての生地がだーい好きなんです!」でした。
リバー仕立て(=二重織)のリネン生地を使っているこちらのシリーズ。リバー仕立てとは、2枚の生地を1枚に縫いたてること。生地と生地とを繋ぐ際、縫いしろを作らず末端同士を折り込んで、手作業で縫い合わせて処理するのだそう。

冬のウールのコートでよく使うこの手法を、ウールよりさらに繊細なリネンで採用するのだから、それはつまり、より高度な技術が求められるわけで。高価になってしまうし、もちろん大量生産もできない。特別感のある生地なのです。

そんな面倒くさい生地でも、宮下さんが「リバー仕立てがだーい好き!」と語るのは、リバーには特有の膨らみやしなやかさがあり、無駄のないすっきりとしたデザインを実現させられるから。程よく厚みがあって裏地や身返しいらず、脱いだままでも美しく仕上がるのです。

ノーカラージャケットやジレ、タイトスカートももちろん素敵なのですが、特に私が推したいのは、このフレアスカート。
ヒップまわりはすっきりと沿うのに対し、裾へむかってたっぷりのフレアシルエットになっている。いわゆるリネンのイメージがドライでラフなのに対し、ふっくら豊かな余韻がある。シンプルなデザイン、軽い素材ではあるけれど、しっかりボリュームを感じます。それはやはりリバーだからこそ、と着てみて納得するのです。
先日(3/18)のインスタライブ内で宮下さんはBEIGE,について、「長く着ていただきたいから、トレンドとは別の、時代の空気感を落とし込んで作っている」と説明されていました。

そして、宮下さんと、同じくデザイナー北出さんとが目を見合わせて「いい素材なのよね〜」とつい微笑むシーン。言葉とおふたりの表情と、そして服に、穏やかだけれど“気迫”を感じた瞬間でした。

「好きなんだから売れなくてもいい」といった、独りよがりや押し付けがましさではなく、うまく自分で時代を解釈し、自分なりの方法を模索する―――。

“お笑い”でも“服”でも、そういうものを目にしたとき「いいね〜! またやってるね〜!!」とニヤニヤしてしまいます。そして、そういうモノやカルチャーを大切にし、伝えられる人でありたい、と私は思っています。

最後に。先日初めて知ったのですが、宮下さんは大の“寅さん”ファンなのだそう。「葛飾柴又の『寅さん記念館』にはもう何回も行っているのよ〜」「粋な雰囲気がだーい好きなの!」とマスク越しでもわかるほどの満面の笑みで、記念館限定のボールペンを見せてくださいました。

こんな若造が大先輩に言うことじゃありませんけれど……「かわいらしすぎますよ〜、もう♡」

ジャケット/¥69,300(税込)
ジレ/¥59,400(税込)
タイトスカート/¥47,300(税込)
フレアスカート/¥69,300(税込)
ニット/¥28,600(税込)

【profile】
1985年愛知県名古屋市生まれ。大学卒業後上京し、約5年半、人材系企業に営業職として勤務。28歳でエディターを志し、転身。現在はフリーランスのファッションエディターとして小学館『Oggi』、講談社『mi-mollet』などで活躍中。またアパレルブランドや百貨店との商品開発、トークイベント、コラム執筆も担当。Instagram@kobayashi_bunでは日々リアルなコーディネートを更新中。noteではエッセイも。