2019SSEssence
2019/03/08
【ツイード】久々に心を許したツイードとはvol.8
3月———冬から春へ衣替えをするこの時期、いつも思い出すのは、母方の祖母のこと。祖母は新潟で洋裁の先生をしていました。孫である私たち三姉妹が幼いころは、お揃いの服をよく作ってくれました。母と三姉妹でデザインを考え、それにあった生地を買いに行き、デザイン画と材料、寸法を書いた紙を宅急便で送る。早くて1ヶ月くらいで仕上げてくれ、我が家に届きます。理想的なデザインとぴったりのサイズ———世界のどこを探しても売っていない特別な洋服たち。今でも実家のクローゼットで大切に保管しています。
その中でも思い出深いもののひとつが、大学の入学式用の服。女子大ということもあり、入学式の定番である黒スーツの比率が他校よりも低く、白やピンクのスーツを着てくる人も結構いました。事前にそういった情報を知っていた私は、「せっかくなら好きなものを着たい!」と、祖母にオーダー。それで作ってもらったのが、ツイードのジャケット&スカートでした。
3月のある日。「あーちゃん入学おめでとう」と書かれたメッセージカード、祖母の畑で採れた新鮮なふきのとうと一緒に、段ボールに入って届きました。パッと明るいイエロー地に白やグリーンが織り交ぜられたツイードで、偶然にもふきのとうと色がリンクしていて…。もちろん入学式では誰とも被らなかったし、少しナーバスだった気持ちも和らげてくれました。
いつものことながらエピソードトークが長いですね(笑)。なにが言いたいかというと、ツイードというもの自体がとってもスペシャルなものなんです。それにツイードは品質の善し悪しが如実に出る素材。だから、ツイードに関してはうるさいし、ちょっとくらいのものでは心がなびかない(笑)。
そんな私が久々に心を許したのが今回の【NIKKI】シリーズ。上品なベージュにネイビーやキャメル、ブルー。太さや染め方、光沢の異なる4種類の糸を組み合わせていてとっても繊細。それでいてしっかりと骨太な存在感で、リッチ。ブランドの本気を感じます。デザインも奇をてらったものではないけれど、ジャケットは袖が9分丈だったり、スカートは膝が隠れる長め丈だったりと、コンサバすぎない工夫が随所に。セットアップではもちろん、ジャケットは白Tやデニムと、タイトスカートはレギンスやスニーカーと、など…実は、コーディネートの幅が広いのも特徴です。
祖母が作ってくれたものも、BEIGE,のこれも、私にとってこの先もずっと大切にしたツイードになりそう。なかなか「これ!」といったツイードに出合えていないなら、ツイードにうるさい私が「ぜひ!」と力強くおすすめします。上/襟から裾、袖口などの「端っこ」部分はフリンジ仕様に。このおかげで「きちんと感」が薄まって、「今」な雰囲気になります。
下/裏地はつるつるではなく、ざらっとしたコットンタッチの素材。これもトゥーマッチを防ぐ大事な要素のひとつ。
ジャケット/¥46,000(税別)
スカート/¥32,000(税別)
【profile】
1985年愛知県名古屋市生まれ。大学卒業後上京し、約5年半、人材系企業に営業職として勤務。28歳でエディターを志し、転身。現在はフリーランスのファッションエディターとして小学館『Oggi』、講談社『mi-mollet』などで活躍中。またアパレルブランドや百貨店との商品開発、トークイベント、コラム執筆も担当。Instagram@kobayashi_bunでは日々リアルなコーディネートを更新中。noteではエッセイも。