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BEIGE, STANDARD / JACKET BEIGE, STANDARD / JACKET

Life + BEIGE,
2016.11.01
BEIGE, STANDARD / JACKET

立ち上げから5年を経たBEIGE,。ブランド立ち上げに際して、最も大事にしたアイテムがジャケットでした。コンセプトである、軽やかに、そして自由に自らの個性を表現できる大人の女性に着てもらうジャケットとはどんなものであるべきなのか。デザイナーの宮下による、ジャケットへのこだわりと思い。

interview: Hiroyuki Yamaguchi

大人の女性が自分らしさを自由に、知的に表現するためのアイテムとして

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写真左 Dublin (ノーカラージャケット)  写真右 Cindy (2枚襟ノーカラージャケット) 

・・・BEIGEにとってジャケットはどういう存在ですか?
   元々このブランドをつくるにあたり、目指す女性像はどんなものか、キーアイテムはなんだろうかと考えた時、ジャケットは外せませんでした。働く女性、社会に出る女性が毎日着られるジャケット。「多様化するライフスタイルを反映した既成概念にとらわれないジャケット」を研究し、大人の女性が自分らしさを自由に、知的に表現するためのアイテムとして、従来のカチッとしたものではない、オフィスでも街でもストレスフリーに着れるものをつくろうと考えました。立ち上げから5年でBEIGE,=ジャケットというイメージが浸透して、最初の思いを感じ取っていただいているようでうれしいです。

・・・いまおっしゃったことを具体的に表現しているのはどんなところでしょうか。
    BEIGE,の代表的なジャケットはノーカラーのもので、「Dublin」と2枚襟の「Cindy」という2タイプがあります(※1)。一般的にジャケットというと、襟のついたメンズ派生のかっちり系が多いのですが、BEIGE,はカーディガンのように羽織る感覚をとても大事にしています。わたし自身、デザイナー人生のなかで数百着のジャケットをデザインしてきましたが、ここまで軽さを意識したジャケットはなかったと思います。ただ、羽織る感覚がありながらもキチンとした着こなしにもなるよう肩パット付きの仕様になっています。そこにも色々こだわりがありまして、例えばDublinでは、肩パットが取り外しできる仕様になっていたりもします。取り外し可能にしたのは、着こなしの観点だけでなく、デイリーに着てもらう上で必須の家庭洗濯に対応したかったからでもありました。

・・・確かに毎日着るには、家での洗濯はうれしいですね。着丈のバランスはどうデザインしていますか?
   定番に関しては、どちらかというと短めです。どんなボトムにも、どんな体型にも合わせやすいのが長く定番になってくれた由縁かなとも思います。ウエストのくびれの下くらいで終わり、どの太さのボトムでも不思議と合う丈なんです。ボタンの位置が低めになっていて、Vゾーンの襟元がきれいに女性らしく見えるようにもデザインしています。時代性や気分をものづくりに反映させつつ、私たちがベストと思える丈をスタンダードとしてつくっています。その時期のトレンドのパンツやスカートと合わせてもいいし、共生地ならセットアップに、デニムと合わせればカジュアルにもなって着回しがいろいろできます。

体の線を隠すというよりも、シルエットがきれいに出るよう立体的なパターンでつくっています

・・・生地や縫製の仕方も特徴的です。
   定番のDublinはとてもストレッチ性に優れた素材で、絶妙な肉感に加えて何より着やすい。皺になりにくく、洗濯もできる。肉厚な生地の重なりがフラットに仕上がるよう、縫い代の処理を三本針の千鳥ステッチにしてあります。ステッチはデザインのアクセントにもなっていますね。

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・・・全体のシルエットはとても軽やかですよね。
   軽さはとても大切にしているポイントです。着た時の見え方として、体の線を隠すというよりも、シルエットがきれいに出るよう立体的なパターンでつくっています。同じパターンでも薄い生地だと体に貼り付いて、テロンとしてしまうこともありますが、この生地は肉厚もあってインナーの当たりや体の線が出にくく、形も崩れないのでハンガーに掛かっていてもきれいに見えますよ。
   あと、Dublinのノーカラージャケットは襟の吸い付き感もポイント。ノーカラーでも後ろ襟が少し立ち上がっているんですね。後ろ襟から前にかけて首に吸い付くことで、襟のラインがきれいにでるようになっています。立ち上がりが首に載る感覚があるので、はだける感じがなくて着やすい。背中に二本の線が入っていますが、それも首がきれいに見えるように処理をしたところです。

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・・・なるほど、ただ隠すのでははく、ジャケットの形と素材を活かして見せるんですね。
   そうなんです。あと、BEIGE,定番のジャケットは裏地を付けていないんですね。なので、春夏用としてのシーズン性があると思われるかもしれませんが、実は秋冬にコートの下に着ることも考えて、すっきり軽くつくっています。そういう意味でも1年間を通したデイリージャケットなんです。裏地がないぶん内側の見え方にはこだわっていて、BEIGE,のディティールアイコンであるゴールドを見えるように入れています。脇にポケットがあるのですが、小さなスペースにポケットを付けるのって案外難しいんです。でも、リップや名刺入れ、携帯のようなちょっとしたものが入れられると、毎日使う服としてうれしいじゃないですか。

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定番ジャケットも毎年新しいサンプルをつくって、必ず微細な修正をしているんです

・・・身長、体重などスタイルや体型のスタンダードや流行りは徐々に変化しています。そうした変化に対して定番ジャケットはどう付き合っていこうと思っていますか?
    実は定番ジャケットも毎年新しいサンプルをつくって、必ず微細な修正をしているんです。ちょっとした生地の袖山を取ろうとか。パッと見は一緒でも、その微妙な修正はこれからもずっとやっていきます。

・・・毎年やっていても、毎回これだという瞬間があるんですね。
   そうなんです! あるんですよね、これが毎回。特に今期はしっかりとした変化がありました。前よりも少しやさしい雰囲気にしたいと思い、8ミリだった肩パットを3ミリ削って5ミリにしたんです。お客さまは気づかないかもしれないけど、この3ミリの変化に5年間のスタイルや気分の変化が現れています。
   仕事や作業をするときに袖をまくりますよね? Cindyは袖口の縫い方が特殊で、袖まくりをした時にキュッと肘前くらいのところで止まるようにつくっているんです。普通のジャケットではこの細さの袖口はあまりないと思います。通常より2、3センチは細い。

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・・・最初につくるときからそうしたシーンをイメージしていたんですか。
   それは考えていました。CindyはDublinの肉厚な生地と違い、ドレープがでるように柔らかい生地を使っています。ジャケットの形は、メンズが究極によくできていると思っていて、だからメンズのディティールのいいところは活かしました。ハンガーにかけたときにわかりやすんですが、立体的なつくりで前側/内側に袖が来るような付け方をしていて、細身の袖でスタイリッシュに見えながらも、体の構造に合って自然に着られるように研究もしました。柔らかい生地でもジャケットとしてしっかりとした感じは出したくて肩パットは入れています。さらに、柔らかい素材を活かしたフォルムにするため、身頃を4面、4つのパターンを合わせてつくりました。そうすることで立体的でやさしい印象を出しています。

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・・・パターンへのこだわりは、他にどんなところに出ていますか。
    先ほどお話した捲くる袖はまずひとつです。あと女性のジャケットは胸のから腰にかけて絞って立体的につくることが多いんですが、着るとシルエットが出るようにしつつも、サラッとした着心地をイメージしているので、分量を絞りすぎず、体や生地に対して素直に表現すべきところはそれを活かすようにしました。縫製工場があまりよくないと、縫い方はもちろん、癖取りやアイロンの技術が足りず袖が外側を向いてしまうこともあるんです。

・・・どの工場と一緒に生産するかのポイントはたくさんありそうですね。
    工場のことでいうと、例えばテーラードジャケット(※2)の襟の折り返し部分には“鉛筆が一本入るくらい”のフワッとした感じでプレスしてほしいとお願いしています。襟以外も軽く仕上げるために生地の芯地を抜いているので、意識しないとどうしても全体がフワッとしてしまう。だから襟以外はきっちりプレスしてもらい、薄いけどしっかりシャープな印象が出るようにしてもらっています。この感覚が工場によってかなり違うので、相性のいい工場が持っている技術と感覚はとても大切です。

・・・ここでも軽さがポイントなんですね。
    肩肘張らないというか、ボタンを止めることはできるけれど、止めずにフワっと裾が流れていくようなジャケットのあり方を大事にしたい。キチンとしたジャケットを着ると姿勢も固くなりやすいと思うんです。ジャケットを着ることが大げさな格好をするということではなく、体の力を抜いて、もっと気軽に着れるものであってほしいと思っています。



※1・・・ノーカラーのDublinは秋冬展開の同型生地違いで春夏にはLuizaという型があります。
※2・・・Dublinの春夏版のLuiza、Cindyともにノーカラータイプとラペルのあるテーラードタイプがあります。