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TIERの水引 - ものづくりにおける守破離 TIERの水引 - ものづくりにおける守破離

Life + BEIGE,
2017.02.03
TIERの水引 - ものづくりにおける守破離

 一年を通じて、日本人であることを最も強く実感し、また日本の文化や風習についても意識的になる時期は、やはり大晦日と正月を迎える年末年始ではないだろうか?家の大掃除に始まり、年越し蕎麦、除夜の鐘、初詣、おせちや雑煮、年賀状にお年玉。そんな毎年の恒例行事はもちろんのこと、おせちと雑煮には漆の重箱や椀、書き初めには筆や墨、和紙といったように、日本の伝統的なものづくりに対しても自然と距離の縮まる時期だと言えるだろう。
 
 そして、家の軒先や扉などを彩る、門松や注連飾りなどの正月飾りにも、当然、日本の素材やものづくりの技術といったものが息づいている。ここ数年、自宅で年末年始に正月飾りを吊るすようになったのは、「TIER(タイヤー)」の正月飾りと出会ったことがきっかけだった。TIERの正月飾りに出会わなければ、家の中に水引を取り入れることなど考えなかったと言うべきか。
 
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 TIERは「結ぶ人、結びつける人」の意。デザイナーの長浦ちえ氏は、武蔵野美術大学の油絵学科を卒業後、水引デザイナーとしてメーカーの水引商品開発の全般に携わったそう。本人に直接聞くまで、僕は水引デザイナーという職種が世の中に存在することすら知らなかったため、強く印象に残っている。その後、パリでも水引を広めるべく滞在し、アートワークを制作。帰国後は地元の福岡に戻って2013年に独立し、活動を続けている。
 
 彼女の手によって生まれた水引の作品や商品は、一見、色彩や形状に遊び心や冒険心といったものが感じられつつも、その根底には伝統的な水引の手法がしっかりと備わっていることに気づく。何より細部に渡って丁寧に仕上げられていることが、繊細な美しさへと繋がっている。
 
 能や茶道、書道など日本古来の道における技芸に、「守破離」という言葉がある。師の教えや型を守り、その後、既存の型を破って自分の型を作り、最後に師と自身の型から離れることで自在となる。TIERの作品や商品には、水引における守破離を着実に実践していることが見て取れる。どんな分野でも、その現状を少しでも更新しようとしている人々、そんな人々の手によって産まれるモノたちを見ているだけで、僕は新年から良い気分になれる。
 
 
 
【プロフィール】
東京都出身。南青山のIDEE SHOPのバイヤーを経て、2007年、method(メソッド)を立ち上げ、フリーランスのバイヤーとして活動を始める。現在、株式会社メソッド代表取締役。デザイン、ファッション、アート、工芸、食など、一切のジャンルを問わず、あらゆる分野で産み出されるモノに対して「潤滑油」としての役割を果たすべく、店作りを中心に、様々な活動を行う。
主な仕事に、国立新美術館「スーベニアフロムトーキョー」、羽田空港第二ターミナル、東急プラザ表参道原宿「Tokyo’s Tokyo」、リサイクルショップ「PASS THE BATON」等でのバイイングやMDコーディネートがある。著書に『デザインとセンスで売れる ショップ成功のメソッド: カリスマバイヤー、ヤマダユウが教える』(誠文堂新光社)「別冊discover Japan暮らしの専門店」(エイ出版社)。http://wearemethod.com/