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気づいたら、横にあったものたち。山田遊(method) 気づいたら、横にあったものたち。山田遊(method)

Life + BEIGE,
2016.08.05
気づいたら、横にあったものたち。山田遊(method)


本当に大事なものは、本来分けて持つべきなのだ

今回は長期の海外出張からの帰路で原稿を書いているのだが、以前もこの連載で言及している通り、僕の荷物はいつだって多く、重くなりがちだ。ただ、平日と休日、また、東京にいる際と出張先や旅先など、その心持ちは時間と場所によって大きく異なってくる。

平日は多くて重い荷物をさほど苦にしないものの、休日は途端に身軽になりたくて軽装に最低限の荷物で出かけたくなる。これと同じような気分はきっと多くの人々が抱いていることだろう。女性の荷物は多少増えるであろうことはさて置き、そもそも財布と携帯電話、あとは家の鍵さえ持って外に出れば、家からそれほど離れた場所でなければ、基本的には何とかなるものだ。

ただ、家という拠点から遠く離れた旅先や出張先では、その心持ちはまた変わってくる。そもそも旅先や出張先は、家(ホーム)から遠く離れたアウェイである。だからこそ持参した荷物で充たされることは本来あり得ないし、むしろいつも心許ないものなのだ。長年、空港内のショップのグッズセレクトを担当しているが、旅にまつわるグッズについてはいつだって需要が高い。

さらに、旅先や出張先が海外となると状況はより複雑となる。国境を越えたさらなるアウェイへの旅には、必要な荷物が増えざるを得ない。にも関わらず、一方でより携帯性や簡易性が求められるようになる。そして、海外への出張先や旅先で個人的に最も悩ましいのが財布という存在だ。

普段使っている僕の財布は大きく、当然中身の全ては貴重品だ。海外へ行く際、クレジットカード以外のものは、日本円の現金も含め基本的には不要となるにも関わらず、なぜか財布自体を肌身離さず持っていたくなる。しかし、前述の通り、残念ながら僕の財布はパンツのポケットに収まるサイズではない。

そんな理由から、今まで様々なトラベルウォレットを試してみたのだが、どうにも納得がいくことがなかった。なぜなら海外にいるとき以外、それらは無用の長物になることが多かったからだ。そして最後に辿り着いたのが、このANTI SYSTEMのPSYCHIC MONEY CLIP(サイキックマネークリップ)である。

そもそもマネークリップという存在は、財布と同義の存在ではない。普段から幾ばくかの現金を財布と分けて持ち歩くことを可能にしてくれる。この行為は海外ではもちろん、普段の外出の際など、意外と便利でしかも安全であることに気づかされる。本当に大事なもの(現金)は、本来分けて持つべきなのだ。

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また、作者である“破改作家”Velo氏(http://www.antisystem.jp/)によれば、元々はユリ・ゲラーのスプーン曲げからこのマネークリップを想起し、3ヶ月もの間、毎日スプーンと睨めっこしていたらしい。そして今では、1本1本、新潟県燕市産の高級スプーンとバタースプレッダーを腕力と全体重を乗せて曲げ、製作しているとのこと。そんな多分にサブカル的な彼の発想から産まれた素直な形はシンプルで、使い勝手も良く考えられており、何よりその製作秘話は、海外でも国内でも良質なコミュニケーションのきっかけとなってくれる。

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最後に、今回の連載をVelo氏のウェブサイトからの映画「マトリックス」の引用で締めたいと思う。

「曲げようと思ったら曲がらないよ。スプーンはないんだ。曲がるのはスプーンじゃなくて、自分自身なんだよ。」

僕には、財布とマネークリップの関係も同様に思える。


・PSYCHIC MONEY CLIP SPOON
3,240円


http://www.antisystem.jp/

 

【プロフィール】

東京都出身。南青山のIDEE SHOPのバイヤーを経て、2007年、method(メソッド)を立ち上げ、フリーランスのバイヤーとして活動を始める。現在、株式会社メソッド代表取締役。デザイン、ファッション、アート、工芸、食など、一切のジャンルを問わず、あらゆる分野で産み出されるモノに対して「潤滑油」としての役割を果たすべく、店作りを中心に、様々な活動を行う。
主な仕事に、国立新美術館「スーベニアフロムトーキョー」、羽田空港第二ターミナル、東急プラザ表参道原宿「Tokyo’s Tokyo」、リサイクルショップ「PASS THE BATON」等でのバイイングやMDコーディネートがある。著書に『デザインとセンスで売れる ショップ成功のメソッド: カリスマバイヤー、ヤマダユウが教える』(誠文堂新光社)「別冊discover Japan暮らしの専門店」(エイ出版社)。
http://wearemethod.com/